[GMEV] モント・トレーネン・フィルハルモニカー演奏会 -古の記憶 魂の調べ-

4月15日にMond Tränen PhilharmoNikeR(モント・トレーネン・フィルハルモニカー、以下「月オケ」)の演奏会「-古の記憶 魂の調べ-」が開催されたので、行ってきました。
会場は、練馬文化センター 大ホール(こぶしホール)。
開演は13:00で、終演は16:00頃でした。

■ニーア好きによるニーアの楽曲好きのための企画オーケストラ
この月オケは、スクウェア・エニックスより2010年に発売されたA・RPG、Xbox360用の「ニーア ゲシュタルト」およびPS3用の「ニーア レプリカント」(以上2作品を、以下「ニーア」とする)の楽曲を演奏されるために結成された有志オーケストラです。
そのため、今回演奏された楽曲は、アンコールも含めてほぼ全てニーアの曲でした。
例外が1曲だけありましたが、ニーアの世界観を考えるとニーアと無関係とも言い切れない曲なので、あれはあれでとても効果的でアリだと思います。

ちなみに、自分は「ニーア レプリカント」の方をDエンドまでクリア済みです。
と言っても発売直後にプレイした古参ではなく、わりと最近プレイしたばかりです。
ニーアが発売された直後から「曲が良い」という評判を耳にしてOSTを購入し、その美しくも儚い曲の数々に魅了されてゲームにも興味を持ったのがキッカケです。
ただ、PVを見た時点ではあまりに難しそうに見えて、なかなか手が伸びないまま数年経過。
そんなときに、昨年の2016年、公式による演奏会「滅びのシロ 再生のクロ」が開催。
それを機に「いっそプレイできそうにないなら、せめてネタバレサイトで情報を漁ってシナリオだけでも軽く把握しておこう」と考察サイトを見てみたら、退廃的・終末的な世界観や容赦のないシナリオが非常に自分好みだとわかって、ようやくゲームをプレイした次第です。
なんだかアプローチの道程が色々間違っている気がしないでもないのですが、この件に関しては仕方ないと思っています。

ついでに言えば、PS3パッケージ版は釣りで1回詰み、その後友人の助言を借りてなんとか先に進められたものの、某ダンジョンの試練でもう1回詰んでいます。
その後、PS Nowでストリーム配信が開始されたので、プラットフォームが変わればクリアできるかもと一縷の望みをかけて再プレイして、3度目の正直でようやくクリアしました。
クリア後にもう一度再プレイしたいと思いつつも、釣りと試練がどうしてもネックとなっていて、その気力がいまだに出せずにいます。

そんなことはともかく。
今回の演奏会には、どうやらゲーム未プレイでも曲が好きで来られた方がたくさん居られた模様。
開演前や休憩時間中に周囲から、ゲーム未プレイと思われる連れに対して「ニーアはこういうゲームでさ」とか「あれはこういう場面のシーンで流れる曲でね」などと熱心に説明している声を、他の演奏会以上によく耳にしました。
確かに、自分がもしゲーム未プレイだったとしても、曲は大好きだったので、おそらく今回の演奏会には来ていたと思います。
ニーアオンリーで、しかも無料の演奏会ですよ、行かない手はありません。

■企画オケとは思えぬ演奏の完成度の高さ
有志による無料の企画オケ、ということもあって、正直なところ開演まで演奏の質については過度の期待をしていませんでした。
過去にも企画オケには何度も足を運んでいますが、演奏技術的に表現の難しい部分は情熱と勢いでカバーしているケースが多かったので。
また、ゲーム音楽の多くの例に漏れず、ニーアの曲もまた、演奏することを想定されていない難しいもののように思ったので。
そのため、開演前は「楽しめれば良いか」程度の軽い気持ちでいました。

が、いざ演奏が始まってみたら、演奏の質がめちゃくちゃ高くて驚愕しました。
有志オケによる無料の演奏会とは思えないぐらいに、演奏がハイレベル。
楽器の演奏もコーラスの歌声もものすごく丁寧で、最初の一音から最後の一音まで気を抜くことなく確実に演奏されていました。
また、調和にも気を使われていて、音の響きが崩れることなく常に美しかったことも印象的でした。

確かに、音が不安定になったり外していたりしていたところも皆無ではありませんでしたが、おそらく数えられる程度だったかと。
それくらい、しっかりと丁寧にまとめられた演奏になっていました。

またニーアの楽曲の特徴でもある感情的な表現も豊かで、穏やかなところ、切ないところ、狂気じみたところが、確かに音に反映されていました。
特に喪失感や攻撃性、狂気などの負の感情が発露する曲の演奏は、鳥肌ものでした。

これまで行ったことのある有志の企画オケと比べても、相当上位に入るくらいの高レベルな演奏でした。
これを超える企画オケなんて、そうないのではないかと。

ニーアの世界観をすごく大事にされている雰囲気が音の一粒一粒から感じられて、あの世界観が好きな身としては嬉しく思いました。
「楽しめれば良いか」なんて軽く考えていて、本当にすみませんでした。
演奏会が終わった今となっては、高品質で演奏してくれた感謝の念とともに平身低頭したい気分です。

■ニーアを描く上で欠かせないコーラス隊の活躍
今回の演奏会で特に活躍されていたのが、コーラス隊だったと思います。
その歌声のハーモニーがとても素晴らしくて、すごく綺麗な響きでした。
ニーアの世界観にとてもマッチした、脆さ、儚さ、曲によっては力強さと破壊衝動、それらがコーラスによって見事に描かれていました。
どれほど練習されたのかわかりませんが、トレーナーさんが付いて、すごく丁寧に細やかに練習されたのではないかと思います。
それが垣間見えるような、そんな美しい響きでした。

また、有志でコーラス隊を結成すると、声質的に他の人と混ざり難い声の持ち主が一人や二人はいて、その声だけが悪目立ちしてしまうことがよくあるものですが、今回それがなかったのも印象的でした。
コーラス隊全員の歌声が一体となってホール内に広がっていく様は、鑑賞していて気持ちが良かったです。

■的確かつ精確な指揮
今回の演奏会の指揮は、後藤正樹氏。
後藤氏の指揮は久しぶりでしたが、相変わらず見事なまでに的確で精確な指揮だったと思います。
その的確さは、音楽素人の自分にもわかるくらい。
どの曲の演奏時だったか忘れてしまいましたが、少しだけ大きな一音を出していた楽器に対して即座に指示を出したっぽい後、次の一音ではちゃんと抑えられた音になっていたところが、すごく印象に残りました。
全体の音を客観的に、かつ瞬時に把握して、バランスや表現を調整する、それが指揮者の役目かと、その指揮姿を眺めながら思いました。
指揮者の楽器はオーケストラだと、どこかで耳にしたことがありますが、今回の指揮を見てその言葉をふと思い出しました。

それにしても、後藤氏の指揮は、何度見てもやっぱり好きです。
理由はよくわからないのですが、何故だか魅了されるものを感じます。
全体を瞬時に把握して、その場の最適解を即座に導き出し、的確に指示を出されている頭の回転の速さは、いつも見てもすごいなぁと思うのですが、それだけではないような気もします。
他の指揮者の方々に比べ、感情よりも理性が強いというか、理性で感情をコントロールしているような印象を受けるのですが、そこにも不思議な魅力を感じています。

ただ、今回一瞬だけ妙に印象に残ったシーンがありました。
3曲目か4曲目だったと思うのですが、メドレーの曲と曲の間が少し空いたところでフライング拍手がパラパラと起こった瞬間に、後藤氏が客席の方を一瞬だけ睨んだように見えたところです。
おそらく無意識の反応だったような気もしますが、あまりにも眼光が鋭くて、そこに演奏に対する素の感情の一片が垣間見えた気がして、その一瞬がすごく印象に残りました。
とはいえ、その鋭さからそれだけ真剣に曲や演奏と対峙されている感じがして、逆に好感度が上がりましたが。

ちなみに、ある曲の最中に指揮棒を吹っ飛ばすというアクシデントもあって、そこもある意味印象的でした。
後方の客席からも、放物線を描く指揮棒がばっちり見えました。

■ニーアの物語を考え尽くされた曲構成
曲の構成は、ゲームのシナリオをなぞったものになっていました。
第1部はゲーム前半(レプリカントで言えばニーア少年期)、第2部はゲーム後半(レプリカントのニーア青年期)、第3部は決戦、という構成。
その構成もまた、演奏同様に完成度が高くて、すごく練り込まれたものでした。

その完成度の高さは、曲と曲の間の拍手に困ったほどです。
演奏に感動した想いを伝えたくて拍手したい気持ちがありつつも、拍手せずにこのまま続けて演奏を聴きたい気持ちもあって、一曲演奏が終わる度に葛藤がありました。
こんなに拍手一つで戸惑った演奏会は初めてかも。

また、非常にゲームに忠実な構成だったためか、ゲームプレイ時の記憶とのシンクロ率が半端なかったです。

第1部と第2部は、わりと冷静に鑑賞できていました。
あんなイベントがあったなぁ、その後にそんなシーンもあったなぁ、と、思い出を掘り起こしながらゲームを追体験している気分でした。
まぁ、普通にゲーム音楽の演奏会を鑑賞しているのと同じ感覚です。

が、第3部に突入した途端、ゲームプレイ時の記憶が一気にフラッシュバックしてきて、それがぴったり演奏とクロスし、その結果、感情が限界突破しました。
懐かしさ、切なさ、登場人物たち各々の切なる想いの強さ、戦わざるを得ない皮肉さと非情さ、その結末のやるせなさが、一気に押し寄せてきた感じです。
第1部、第2部でもそんな感情は確かにあったのですが、それ以上のものが第3部でどっと襲い掛かってきて。
結果、感情が千々に乱れる感覚に陥りました。

本編最後の曲が終わったときは、やるせない気持ちでいっぱいになりました。
満足感も確かにあったけれど、それと同じくらいにやるせない気持ちもありました。
満足感は演奏に対してのもので、やるせなさはゲームに対するものだと思いますが、それらがごちゃごちゃになってしばらく気持ちの整理が付きませんでした。

なんとか気持ちと折り合いを付けようとしてあれこれ考えた結果、結論としては「感無量」という言葉が一番しっくりきました。
うん、感無量な演奏会でした。

■原曲を重視しつつもフルオケ用にアレンジされた楽曲の数々
編曲の傾向としては、原曲重視。
ただ、他の企画オケよりも、やや強めにアレンジされていたように感じました。
原曲をそのまま素直にオーケストラに落とし込むのではなく、ゲームの各シーンで伝えたいことや、その時の登場人物たちの心情まで再現するような、そんな編曲だったように思います。

まぁ、原曲があまり音に厚みのないある意味さっぱりした硬質な曲が多く、これを単純にオケに落とし込んだだけでは味気ないものになりそうなので、今回披露された程度の編曲はアリではないかと。
フルオケで演奏する上で必要な緩急やメリハリを、原曲よりもやや強めに付けるためと思われるアレンジが多かったですし。
それに、原曲の雰囲気をとても大切にしつつ、ゲームの各シーンとも真っ正面から向き合ったような編曲だったので、不満はほとんどありません。
むしろ、すこぶる満足しています。

ただ一点、ちょっと不満に感じた点があるとすれば、同じ曲を何度も聴くことになったこと。
これは曲の構成も絡む話なのですが、あまり大きなアレンジの違いのない曲を、1つの演奏会中に3, 4回も聴くと、さすがに飽きるというか疲れるというか。
構成を大事にした結果というのも理解できなくもないのですが、アプローチの仕方を少し変えてみるなどの飽きない工夫が欲しかったなぁ、という気もします。

■凝った演出だけでなく、豪華なサプライズまで続々と
演奏以外についても少し言及します。

演奏以外の部分においても、ニーア一色な演奏会でした。
特に開演前と休憩時のカゲアナが、ニーア好きにはたまらないくらい凝ったものでした。
鑑賞時の注意事項が「掟〇〇〇」になっていたり、「休憩」ではなく「休息」だったり。
細かいところまで凝っていました。

また、アンコールではシークレットゲストとして、実際にニーアの楽曲に参加された中川奈美さんが登場。
そのままアンコールの演奏にも参加されていました。
終演後にはマイク片手にステージ上からアナウンスを行っていましたが、声質からするとどうやらこれまでのカゲアナも全て中川さんだった模様。
全然気付きませんでした。
確かに、開演前アナウンスのうち掟の部分だけやや厳格な雰囲気に変わったから、妙に小慣れているアナウンスだなぁとは思いましたが。

さらに、アンコール1曲目の後には、ニーアの曲を作曲をされた岡部啓一氏とディレクターのヨコオタロウ氏も、スペシャルゲストとして登壇。
エミールヘッドを付けていない素顔のヨコオ氏を見たのは初めてかも。
岡部氏は、自身のニーアの楽曲を自画自賛しつつ(実際、ものすごい良曲ばかりですが)、しっかり(ちゃっかり?)「ニーア オートマタ」の宣伝もされていました。
その一方で、GWに開催予定の公式演奏会の宣伝がなかったのは、チケットが既にSOLD OUTしていたからでしょうか。

ところで、中川さんのコメントで「OSTがゲームの3倍売れてる」「ゲームを買った人の3分の1の方がOSTを買っている」とあったのですが、あれは本当なのでしょうか。
そういえば、「滅びのシロ 再生のクロ」でヨコオ氏が「ゲームより音楽の方が評価されている」というようなコメントをされていたし、本当にその通りなのかもしれない。

それにしても、ゲームクリエイターやゲーム音楽の作曲家の方々は、本当にフットワークが軽いなぁと思います。
過去にも、アマチュア楽団の演奏会に作曲の方が直々に来場されるケースは多々ありましたが。
非公式の演奏会にも関わらず足を運んでくれて、場合によっては軽くトークまでしてくれて、ファンとしても嬉しい限りです。

■感想まとめ
予想の遥か上を行く素晴らしい演奏、構成、編曲の数々で、たっぷりとニーア充できた演奏会でした。
ニーア好きとしても、ニーアの音楽好きとしても、今回の演奏会に参加できて良かったし、満足しました。
演奏とゲームプレイ時の記憶がシンクロして、感情の整理が追い付かないような珍しい体験もしましたし。
これが無料の演奏会なんて勿体ないくらいでした。
わりと真剣に、チケット代の振込先はどこですか?と問い合わせたいくらいです。

岡部啓一氏も仰られていましたが、ぜひ「ニーア オートマタ」の演奏会も開催してほしいです。
「ニーア オートマタ」も良曲が揃っているし、「ニーア オートマタ」の方がフルオケに向いていると思うので、検討をお願いしたいです。
たとえ開催までに7年かかるとしても、待ちます。待つ覚悟はできています。

※[2017/04/16更新] コメントでご指摘をいただいた点について修正しました。


これより下の追記は、今回の演奏会のセットリストと、印象に残った曲ごとの感想になります。


セットリストは次の通りです。
-----
[第1部]
01. 新宿
(ドラッグオンドラグーンより「第十三章 最終」~)夏ノ雪
02. フィールド
イニシエノウタ/デボル~光ノ風吹ク丘~売買ノ街
03. 白の書
不完全ナ石~青イ鳥
04. カイネ
心閉ザセシ鉄棺~喪失/Ver.ピアノ~オバアチャン~カイネ/救済
05. 仮面の王
仮面ノ誉~流砂ノ神殿~掟ニ囚ワレシ神
06. 奪われた戦士
全テヲ破壊スル黒キ巨人~カイネ/逃避~魔王ノ城/記憶~イニシエノウタ/運命~エミール/犠牲~ヨナ/Ver.ピアノ

[第2部]
07. 5年後
青イ鳥~イニシエノウタ/ポポル
08. エミール
最終兵器~深紅ノ敵~喪失/Ver.ピアノ~カイネ/救済
09. ロボット山
愚カシイ機械~深紅ノ敵~全テヲ破壊スル黒キ巨人~ヨナ/Ver.ピアノ
10. フィーア
仮面ノ誉~喪失/Ver.重奏~エミール/業苦~全テヲ破壊スル黒キ巨人~エミール/犠牲

[第3部]
11. 魔王ノ城
魔王ノ城/記憶~儚キ者達ノ舞踏~魔王ノ城/咆哮~エミール/業苦
12. 真実
イニシエノウタ/運命~イニシエノウタ/デボル~エミール/犠牲
12.5. Interlude
ヨナ/Ver.ピアノ
13. 魔王
魔王~魔王/Ver.オルゴール
14. A Ending
Ashes of Dreams/English Version

[アンコール]
E-01. 魔王/Ver.アンコール(feat. Nami Nakagawa)
魔王
E-02. D Ending
全テヲ破壊スル黒キ巨人~エミール/業苦~魔王/Ver.オルゴール~Ashes of Dreams/Aratanaru-JP Version
-----

これより下は、印象に残った曲ごとの感想になります。

01. 新宿
まさかの「ドラッグオンドラグーン」(以下、DoD)新宿エンドから開始とは。
DoDはOSTを所持しているものの未プレイで、どこで流れる曲か知らなかったのですが、ニーアがDoD新宿エンド後の話ということは知っていたので、DoDを知らないながらも新宿エンドの曲ということには気付きました。
帰宅後にプレイ動画を確認したのですが、この曲が流れるシーン、かなりえげつないですね。
俺、この音ゲー、クリアできる気がしないです。。。

そんな新宿エンドの鐘の音が収まると、ニーアのプロローグ曲「夏ノ雪」へ。
指の温まっていない冒頭からこんなしっとりした曲で、演奏は大丈夫かなと不安視もしていたのですが、完全に杞憂でした。
最初から非常に丁寧な演奏とコーラスの歌声で、素晴らしい響きでした。

OST収録版よりも、ゲームに近い形に編曲されていたような気がします。
戦闘イベントをより強く想起させるためか、中盤の力強い部分が原曲よりも強調されていたような。
「夏ノ雪」はニーアの曲の中でも特に好きな曲の一つなのですが、良いアレンジかつ演奏だったので「なるほど、そうきたか」と感心しながら鑑賞してました。

02. フィールド
シンプルでしっとりした「イニシエノウタ/デボル」からの、開放感の溢れる「光ノ風吹ク丘」のギャップがたまりませんでした。
「光ノ風吹ク丘」の生演奏は、やっぱり良いものですね。
ニーアの中では数少ない前向きな曲で、今回の演奏でも前向きさがちゃんと出ていて、聴いていて気持ちが良かったです。
「イニシエノウタ/デボル」から「光ノ風吹ク丘」のギターのサウンドも、風情があってとても良い味が出ていました。
また、「光ノ風吹ク丘」から「売買ノ街」への繋ぎもアレンジも上手かったと思います。

03. 白の書
今回演奏されたニーアの曲の中で、「愚カシイ機械」と同列で「どうやって演奏するんだろう」と不思議に思っていたのが、ここで演奏された「不完全ナ石」でした。
この曲の独自性の表れでもあるポコポコ鳴り続けている硬質な音は、マリンバとシロフォン(かな?)で再現されていました。
ひたすら同じフレーズを高速で叩き続けるという、うっかりすると演奏しながらゲシュタルト崩壊しそうな苦行に対し、パーカスの方々は見事にクリアされていました。
テンポはマリンバとシロフォンの演奏者に任せて、他の楽器やコーラスがそれに合わせるように演奏していたのかな。
マリンバとシロフォンの2人の息がぴったり合った演奏で、これは本当に見事でした。

04. カイネ
どの曲も、ピアノの音色が印象的でした。
特に「オバアチャン」から「カイネ/救済」にかけての演奏に感動しました。
ピアノの響きが、とにかく美しかったです。
これは「オバアチャン」が人気曲なのも素直に納得できます。
こんなに良い曲だったのか。認識改めよう。

05. 仮面の王
「流砂ノ神殿」は、個人的にはトラウマ曲です。
砂の神殿の試練がどれも難しくて、そこで一度詰んだことがある身なので。
曲自体はとても良い曲なのはわかっているのですが、演奏が素晴らしかったからか余計にあのときの悔しさを思い出してしまい、心の中で頭を抱えていました。
まぁ、そんなことを感じていたのは、たぶん自分だけだったと思いますが。
あの砂の神殿の試練のせいで、2回目プレイ(2周目ではなく最初から再プレイ)できる気がしないんだよなぁ。もう一度やれって言われてもちょっと無理ですマジで勘弁してくださいトラウマなんですよ本当にガチで。

06. 奪われた戦士
「全テヲ破壊スル黒キ巨人」が、とても力強くて迫力のある演奏でした。
この曲、「ニーア オートマタ」にもアレンジ版が収録されているけれど、続編でも採用された理由が今回の演奏でわかったような気がしました。
冒頭のパーカスとコーラスのインパクトといい、印象的に一音一音爪痕を残していく金管の音といい、どこを切り取っても格好良さしかありません。
OSTでも格好良い曲だけど、生演奏だとさらに格好良さに磨きがかかっていました。

途中、カイネのテーマ曲とエミールのテーマ曲が掛け合うところは、鳥肌が立ちました。
違和感がまるで仕事をしない、驚きの親和性の良さ。
その掛け合いは2人の信頼の厚さを表しているようで、すごく良いアレンジでした。
パンフレットにも書いてありましたが、まさにカイネとエミールの選択と決断の表れになっていました。

そして、「ヨナ/Ver.ピアノ」。
ピアノバージョンですが、アレンジが結構加わっていました。
最初はピアノソロで、ヨナを攫われたニーアの哀しみを表現。
途中で管弦楽器が加わって力強く壮大なものになり、そこがニーアのヨナ奪還に向けた決意を表しているようでした。
また同時に、ヨナを手に入れたことに対する魔王の達成感の表れでもあるように感じました。

08. エミール
「深紅ノ敵」はともかくとして、「最終兵器」と「喪失/Ver.ピアノ」がひどく色彩の欠けた演奏に聴こえました。
灰色の音、モノクロの音というか。
ゲームで流れるシーンを考えるとすごく正しい表現なのですが。
あまりにも灰色だったので、そこまで色のない演奏ができるものなのかと、逆に驚きました。

その驚きがさらに覆されたのが、続く「カイネ/救済」。
この曲で、一気に色が付いたように感じました。
といっても、そこはニーアの曲、色が付いたと言っても色鮮やさがズバッと広がる感じではなく。
灰色の景色のあちこちに、赤や黄色、橙色のような暖色系の色が差し込むような感じです。
そのあたりの加減も実にニーアらしくて、とても上手かったです。

09. ロボット山
「どうやって演奏するんだろう」と不思議に思った曲の2つ目が、ここでようやくお披露目。
率直に言えば、パーカッション隊の本気を感じました。
「我らにかかれば、どんな音でも再現してみせよう!」と言わんばかりの再現率・完成度の高さ。
あの機械的な音をどうやって表現するのかといった疑問をあっけなく吹き飛ばす勢いで、見事に楽器で再現していました。
工夫の勝利というか。これはすごかったです。
あの音って、楽器で再現できるものなんだ・・・すごいな。

10. フィーア
5年前と変わらず長閑な「仮面ノ誉」と、森も仲間も次々と奪われていく狼たちを表現した「喪失/Ver.重奏」。
その対比に、絶妙さと切なさから来る感動を感じました。

そして、仮面の王とフィーアの結婚式。
この結婚式イベントは、今回の演奏会において最も凝った演出が為されていました。
コーラス隊が観客席の通路に散らばり、結婚式の歓迎ムードを身体で表現。
民衆からの祝福の掛け声と踊りを再現していました。
そこから狼たちの襲撃シーンに突入し、散り散りに逃げ惑う民衆(=コーラス隊)。
ニーアの中でも特に印象的なイベントの一つだから、凝りたい気持ちはよくわかりますし、実際面白かったです。

それほどまでにあのイベントをリアルに再現されたものだから、続く「エミール/業苦」と「全テヲ破壊スル黒キ巨人」もリアルに感じられました。
特に「全テヲ破壊スル黒キ巨人」は破壊的な演奏で、まさに復讐の曲。
ただ、2周目以降にわかる狼たちの置かれた立場を考えると、ほんのり複雑な気分になりました。
そこがまた、ニーアの良いところなのでしょうが。

11. 魔王ノ城
「儚キ者達ノ舞踏」は、ゲーム通り狂っていく様を再現。
最初こそ華やかなワルツだったものが、ゲーム同様に異様なものへと変貌していく様には、ゾクゾクさせられました。
あの狂気じみた演奏は、狂気が突き抜けて感動すらありました。
なんというか、情熱も臨界点を突破すると狂気に転じる様を見たような感じというか。
そして、その狂気に魅力を感じてしまったというか。
聴いてはいけないものを聴いてしまい、そこに魅了されてしまったような、そんなカリギュラ効果的な興奮を感じました。
もっとも、尺の都合だと思いますが、ゲームよりもずっと早いペースで狂っていきましたが。

「魔王ノ城/咆哮」では攻撃を弾く甲冑の鋼の音が再現され、ゲームプレイ時の苦労を思い出しました。
その後の「エミール/業苦」で仮面の王を思い出し、心の中で号泣。
第3部は、1曲目から全力で観客の心を抉り過ぎです。
ゲームを最後までプレイしているから、セットリストを見た瞬間から分かっていたことでしたが、実際に耳にしたときの攻撃力は予想を上回っていました。

12. 真実
魔王の城でのデボル・ポポル戦を、余すところなく再現。
戦闘のシーンだけでなく、ポポルの暴走とエミールの決意、そして2人が消滅するところまで、全て音で再現されました。
小さな残滓が落ちて消える小さな音と、エミールの杖が落ちる音が再現されたときには、一連のシーンが脳内再生されて、鳥肌が立ちました。
「愚カシイ機械」といい、「儚キ者達ノ舞踏」といい、この曲といい、あまりにも忠実に再現されていて、そこに執念のような狂気をも感じました(誉め言葉

「イニシエノウタ/運命」は6曲目にも演奏されていましたが、こちらの演奏の方がたぶん原曲に近かったのではないかと。
ここで演奏された方が、演奏的にも構成的にも好みでした。
原曲同様の力強さと疾走感があって、たぎりました。
もっとも、この曲が流れるシーンやこの後の展開を考えると、たぎっている場合ではなかったのですが。

ちなみに、指揮の後藤氏が”狂気のあまり”指揮棒をヴァイオリン部隊の方に吹っ飛ばしたのは、ここの「イニシエノウタ/運命」の中間あたり。
一瞬だけ「あっ」というような動揺が見えましたが、すぐに平静に戻って指揮を続行されたあたりは、さすがとしか言いようがありません。
あれは、指揮棒が譜面台に当たって引っかかったのかな。
まぁ、「イニシエノウタ/運命」ならば仕方ない気がします。ニーアの中では数少ない情熱的な曲だし。

13. 魔王
この「魔王」は、かなり大胆にアレンジされたものが演奏されました。
OST収録版の展開と異なり、ゲームの流れに合わせた感じというか。
そのためでしょうか、主旋律は確かに「魔王」そのものなのだけど、緩と急が交互に出てくるユニークなアレンジになっていました。
その展開から、戦闘前イベント→黒の書戦→決戦前イベント→魔王戦(第1段階)→ヨナイベント→魔王戦(第2段階)、みたいな流れを想像しました。

「魔王/Ver.オルゴール」は、グロッケンシュピールとヴィブラフォンで再現。
その2台の透き通った儚い響きに、魔王の望みと人類の悲願が、ともに潰えた瞬間を見た気がしました。

OST以外のアルバムが出典元の曲って、冒頭のDoDを除外すると、この「魔王/Ver.オルゴール」だけでしょうか。
ちなみに「魔王/Ver.オルゴール」はOST未収録で、「15 Nightmares & Arrange Tracks」の方に収録されている曲です。

14. A Ending
今回の演奏会の本編はAエンドルートなので、魔王戦からそのままエンディングへ。
原曲同様のしっとりした感動的な演奏に、ゲームをプレイした時の記憶を強烈に思い起こされて、この曲の演奏中ずっと、感情が千々に乱れる感覚を受けました。
ここまで辿り着いた達成感や感動みたいなものも確かにある一方で、ここまで辿り着いてしまった喪失感ややるせなさも同時にあって。
また、遥か未来の話を、ニーアの世界から見たら遥かな過去の存在である今の自分が、思いを馳せて偲んでいる、というのが、ものすごく奇妙で不思議な印象もあって。
演奏が終わって指揮の手が下ろされた後も、拍手をすることに戸惑ったくらい、あまりにも色々な感情を揺り動かされた演奏でした。
その戸惑いすらもゲームをクリアした時に似たようなものを感じたので、そういう点においても素晴らしい演奏だったと思います。
もし、その戸惑いも今回の演奏会に織り込んでいたことだとしたら、この演奏会を企画された方は相当な策士ではないかと。

E-01. 魔王/Ver.アンコール(feat. Nami Nakagawa)
OSTに収録された「魔王」に近い形で演奏されました。
曲の展開は、本編で演奏された「魔王」よりもOST版に近かったです。
なんというか、「あ、俺の知ってる『魔王』がきた」という安心感を感じました。
本編で演奏された魔王のアレンジに意味があったことは分かっていたので、それはそれで満足していたのですが、それでも1ループぐらいはOST版の「魔王」が聴きたかったので。

ここでは、実際にニーアの楽曲に参加されている中川奈美さんがボーカルとして参加。
力強くも切なく響く中川さんの歌声を、コーラス隊が下支え。
そこに、まるでパイプオルガンのような音色を奏でるピッコロ、フルート、チューバの三位一体が、荘厳さを添えていきます。
そして、中盤以降で他のオケ隊が加わり、場の雰囲気が一気に加速。
レプリカント・ニーアの想いと魔王の想いがぶつかり合うような、互いの譲れない願いを、耳と肌で感じたような気がしました。

そういえば、13曲目の「魔王」でもパイプオルガンのような音が聴こえて「?」と不思議に思ったのですが、あれピッコロとチューバだったのですね。
高音部をピッコロ、低音部をチューバ、それを柔く包むようなフルートで、パイプオルガンに似た音を出していたようでした。
というか、管楽器でそんなことができるとは、思いもしませんでした。

E-02. D Ending
最後の最後にDエンドとは。
確かに、最後を飾る曲として、これ以上に相応しいエンディングもないと思います。
カイネ戦、ニーアの選択、そしてDエンドのスタッフロール。
カーソルの移動や決定、セーブデータが消去されるときのSEまでもが再現されました。
しかし、記録は消されても、記憶は消されないのです。

・・・・・・すみません、言ってみたかっただけです。

前の曲に引き続き、中川奈美さんがコーラス&ボーカルとして参加。
「Ashes of Dreams/Aratanaru-JP Version」ではボーカルとして、それ以外の曲はコーラスとして参加されていました。

「Ashes of Dreams/Aratanaru-JP Version」は、ほぼ原曲通りだったと思います。
切なく奏でられるピアノソロから、2番でボーカルが入り、弦楽器が加わり、管楽器が加わって、泣きたくなるくらい胸が熱くなりました。
そして、再びピアノソロとボーカルに戻るCメロから大サビへ続く盛り上がりが、もう本当に最高でした。
本編も含めたこれまでの演奏会の流れとゲームプレイ時の記憶が重なり合って、一気に走馬灯のように脳裏を流れて、色々なあれこれがブワッと押し寄せてきた感じがしました。
様々な記憶と感情入り乱れて感動が突き抜けて、なんというか、上手く言葉になりません。
そういう意味でも、感無量でした。

最後の一音の余韻まで、余韻が消えた後の静けさすらも、しっかり堪能。
かれこれ幾つものゲーム音楽の演奏会に足を運んできましたが、余韻の消えた後の静けさまでもが心地良くて長く続いてほしいと思った演奏会は、今回が初めてだったかもしれません。
それくらい、素晴らしい演奏会でした。

コメント

この記事へのコメント

とても読み応えのある感想をありがとうございます。
中川さんのコメントの件ですが、「OSTがゲームの3倍売れてる」とは仰っていません。「ゲームを買った人3分の1がサントラを買っている」と仰っていたはずです。
2017/04/16(日) 18:17:22 | 匿名 #-[ 編集]
Re:
ご指摘、ありがとうございます。
あ、すみません、完全に記憶違いしていました。本文を修正しておきます。
2017/04/16(日) 22:02:40 | ふゆき #-[ 編集]

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