[本] 秋の牢獄

2011/01/29(土) 18:23:03 | カテゴリ:
恒川光太郎「秋の牢獄」(角川ホラー文庫)読了。

朝、目が覚めたら11月7日だった。次の日も、その次の日も。周りの人は昨日と全く同じ言動を繰り返す中で、藍は一人、「11月7日」という1日を繰り返していた。
どうしてこんなことになったのか分からないまま、「11月7日」から脱するためにあれこれ試すも、日が変わる瞬間に全てがリセットされる。次の「11月7日」に引き継がれるのは記憶だけ。
そんな中、藍と同じく「11月7日」を繰り返す隆一と出会う。彼は、「11月7日」を繰り返す「リプレイヤー」は他にもいるという。


表題作「秋の牢獄」の他に2作を収録した短編集です。
恒川作品らしく、怖さはあまり強くないけれど、幻想的というか不思議で切ない話が詰まってます。

「秋の牢獄」の冒頭10ページほどを読んだときに、真っ先に思い浮かんだのは、解説であげられている「リプレイ」でも「ターン」でもなく、98年秋(だったと思う)に放送されたTVドラマ「世にも奇妙な物語」の「そして、くりかえす」でした。
今となっては、覚えてる人あまりいないでしょうが。
ある1日を何度も繰り返し、主人公がそれを利用してあれやこれやと試すも、やがて空しくなって途方に暮れるっていう展開がそのままだったので、ふと思い出してしまいました。
ただ、後半は謎の人物(?)が登場したりして路線が大きく異なってくるので、これはこれで楽しめました。

2作目の「神家没落」は、日本全国津々浦々、各所を定期的に転々と瞬間移動する家と、そこに住む人の話。
というと、ほのぼのした話のように聞こえるかもしれませんが、そこは恒川作品。
神家は必ず1人を敷地内に縛りつけ、縛られた人は敷地の外に出ることができなくなってしまうという条件付き。
そんな家の存在自体が、現代から見ると悪夢のように見えました。
そして最終的には、道具は使う人次第で善にも悪にもなれる、という印象が残りました。

3作目の「幻は夜に成長する」は、幻を他人に見せる「幻術」の能力を持った少女の話。
自分と違うものを排斥する悪意が詰まった話です。
唯一の救いは、少女の父親かな。あの1シーンには、少しほっとさせられました。
ああいうシーンがないと、短編とはいえちょっと精神的にキツかったかも。

角川ホラー文庫の作品とはいえ、嫌な気分にさせられるようなグロい描写やエグいシーンはあまりありません。
描写はキレイなんだけど、なんとなく切なくて、怖い。
そんな、じわじわ沁みこむ様な感じです。
恒川作品はそういう雰囲気のものが多いので、わりと安心して読めるのが強みだと思います。

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