[本] 新世界より

2011/05/21(土) 21:59:18 | カテゴリ:
貴志祐介「新世界より」(講談社文庫)読了。

「呪力」と呼ばれる超能力を手に入れたことで、それまで人が築き上げてきた文明は一度崩壊した。
それから1000年。利根川に程近いところにある「神栖66町」。八丁標で外界と隔てられた集落の中で、子供たちは日々の生活を送っていた。そんな彼らの間で囁かれる、様々な異形のものの話。ネコダマシや風船犬、バケネズミ。それらの中でも「悪鬼」と「業魔」は特に恐るべきものとして、その昔話を子供たちは幼い頃から聞かされ続けた。
子供たちは成長し、やがて呪力を得る。そして、全人学級で呪力を自在に操るための訓練の一環で、ついに子供たちだけで八丁標の外に出られる日がやってきた。


数日前の地震の速報で、「神栖」が実在の地名だったということを初めて知りました。
他にも作中にいくつか地名が出てくるのですが、見覚えのある地名ばかりだったので、たぶん全部実在の地名かな。

というわけで。
「新世界より」がようやく文庫化されたので、上・中・下巻まとめて購入。
先にハードカバーで読み終わっていた友人から「おもしろかったよ」と言われ続けていたので、以前からずっと気になっていました。
別の本を読み終わらせて、ようやく上巻から読み始めたのはGWちょっと前あたり。
自分の読むスピードの遅さと、全3巻構成という分厚さから、読み終わるのは半年後かなと思っていたのですが、気が付いたら一気に読み進めていました。
上巻の後半あたりから、止め時に苦労させられることが幾度。
噂に違わぬおもしろさです。
貴志作品の中で個人的なベスト1は「クリムゾンの迷宮」だったのですが、それを超えました。
# ちなみに、巷で噂の「悪の教典」はまだ読んでません。文庫化待ち。

ジャンルは、SFでファンタジーでホラーで冒険小説。
ベースはたぶんSFに分類されるんじゃないかと思いますが、いろんな要素が混じっているので、明確にコレと言えるジャンルが思い当たりません。
それだけに、いろいろな要素を楽しめる作品とも言えます。

ただ、ところどろこで残酷描写が挟まれるので、血みどろの展開が苦手な方は要注意。
そういった描写から、貴志さんってやっぱホラー小説大賞出身者なんだなぁ、とも思ったりもしましたが。
最近、純ミステリっぽい作品が多くて、ホラー好きとしては少し寂しくもあったので。

「1000年後」と「超能力」というキーワードだけでも、俺のツボを突きまくりだったのですが、それらを上手い具合に調理して、見事なまでに”歪んだ”世界観を作り出していたのはさすがだと思いました。
超能力ものというと、派手で華やかで煌びやかな超能力合戦であったり、もしくは能力者の苦悩のようなものが描かれたりする作品が、これまで多かったような気がします。
この作品は、登場人物のほとんどが超能力を持っていて、人々は超能力を使えて当たり前の世界。
その誰もが持つ「神の力」故の歪みと、その歪みから生じた”膿”。
それらが描く世界はひどく暗くてドロドロしていて、おどろおどろしいものになっています。

超能力があったら便利だなぁ、と夢見ることはあるんですが、とはいえこんな1000年後はさすがに嫌だなと思います。
そう思わせることが、この小説の目標なのかもしれませんが。

貴志作品が好きな方はもちろん、SFやホラーに少しでも興味がある方にもオススメです。

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