[GMEV] 教会で奏でる時空を超える音の調べ シュデンゲンアンサンブル第三回演奏会

4月2日(土)に、ゲーム音楽を演奏するプロジェクト「Melodies of Crystal」(以下、MoC)が抱える楽団のうちの一つ「シュデンゲンアンサンブル」の第三回演奏会「教会で奏でる時空を超える音の調べ」に行ってきました。
会場は、ルーテル市ヶ谷センター ホール。
開場17:15で開演18:00、終演は20:30頃でした。

今回演奏された曲は「ゼノギアス」と「クロノクロス」。
両方とも光田康典氏が作曲された作品で、どちらもいくつもの楽団で演奏されている人気の高い作品です。
それらが、今回は教会のホールという、通常のホールとは違った環境で演奏する試みが為されました。

教会のホールだからでしょうか、反響音が通常の音楽ホールに比べて、かなり強かったように感じました。
音がステージからだけでなく、反響音も加わって、全方向から降ってくる感じ。
ホールが狭い(キャパシティが200人ほど)ので、直接ステージから飛んでくる音と反響音にタイムラグはなく。
弱い音も強い音も、穏やかな音も緊迫感のある音も、どの音にも包まれている感じがしました。

演奏とは関係ないのですが、ホール内のステージ上の照明がユニークだったのが印象的でした。
明りの周囲に奇妙な形のオブジェが取り囲んでいる感じで、それ自体は一見すると意味のないものにしか見えませんでした。
が、ステージ奥の大理石(かな?)を見ると、その明りが十字架のように並んで見えて、ちょっとした感動を覚えました。
今回演奏される曲目(特にゼノギアス)を彷彿とさせるそれも、演奏会を彩る演出の一つになっていたように思います。
がっつり作り込まれている感じだったし、あれ、元からこの教会のホールにあったものだよなぁ、たぶん。。。

演奏技術は、相変わらず激高でした。
安定のMoCクオリティです。
後半の方で、ちょっと音のバランスが悪かったり、楽器の調子が悪かったのか音がピロッてたりしていた箇所もありましたが、両手で数えられる程度の頻度。

そして、技術力だけではなく、表現力も相変わらず素晴らしかったです。
演奏による表現力の高さは言わずもがな、編曲による表現の高さもハイレベルでした。

今回の演奏会でようやく気付かされたのですが、MoCは「演奏したい曲を演奏する」というよりは「表現したいゲームを表現する」をモットーにしていることに思い至りました。
他の楽団ではどちらかというと前者のニュアンスの方が強いけれど、MoCは後者を強く押しているような気がします。
ゲームをプレイしていて感じた想いや感動を、音楽に変換して表現し、伝え、共有したい、という意思で活動されているのかな、と。
それで、単曲演奏はほとんどせず、どの演奏会でも1~2つの作品を取り上げて、深く掘り下げるということをされていたのですか。なるほど納得。

ただ、「このゲームはこうして音楽で表現したい!」という想いを演奏者全員に浸透させるには、小規模編成でないと難しいのかも。
だから、MoC(特にシュデンゲン)はいつも小規模編成だったのか。

それにしても、MoC主催の演奏会には今回で8回目になるのに、気付くのが遅過ぎました。
うぅ、俺、全然思慮が足りてないなぁ。反省。

演奏曲目は、第一部にゼノギアス、第二部にクロノクロス、という構成。
編曲の担当は、ゼノギアスが大澤久氏、クロノクロスが橋本慎一氏でした。

ゼノギアスの曲構成は、キャラクターごとに楽章を編成し、さらにそれを時系列に並べたものでした。
OPムービーで描かれたイベントが入っていない点だけ少し引っかかりましたが、ゲーム内世界の時間軸を過去から未来へと追っているような気分になりました。
あの膨大で壮大な世界観を、上手くコンパクトにまとめられていたと思います。

編曲は、安定の大澤氏アレンジでした。
原曲がかなり破壊されたアレンジもいくつかありましたが、思っていたほど強いアレンジとは感じませんでした。
楽器の編成や特性に合わせた、演奏に無理のない程度のアレンジは当然ありましたが、それ以外の大胆なアレンジは、一部を除いてそれほど強くなく。
それでいて、ゲームの世界観やシナリオ、曲の魅力を引き出すのには、十分な編曲でした。
編曲よりも、選曲と曲構成の勝利という印象です。

一方、クロノクロスの曲構成は、シナリオ順というよりは事象発生順、といった方が正確でしょうか。
そもそもゲームで描かれた一連の顛末に至った経緯は、過去(未来?)でこういったことが起こってこうなって・・・というところから描かれていました。
クロノクロスのシナリオをゲームプレイ中はほとんど理解できなくて、1年ほど前にWikipediaを読んで初めて全体像を理解した自分が言うのもなんですが、クロノクロスのシナリオを理解していないと曲順の把握は難しかったのではないかと。
ただ、ある程度理解していると「あー、なるほど」と納得できる曲順でした。
そういう曲の並べ方があったかと、内心で膝を打ちました。

ちなみに、楽章の名前が軽くネタバレです。
まぁ、もうリリースされてから10年以上は経過しているゲームなので、もう解禁してもいいだろう、とも思いますが。

編曲は、大澤氏に比べるとかなり原曲重視というか、シンプルというか、素直というか。
あまりガツガツと練り込んだ感じではありませんでした。
原曲重視なアレンジが好み方にとっては、聴きやすかったのではないかと。
ただ、原曲に寄り過ぎて、演奏に苦労されていた様子がちらちらと垣間見えました。
それと、和音の一体感の薄さが少し気になりました。特に1, 2楽章。
音がバラバラな方向に飛んでいってるというか、反発し合って混ざりきっていないというか、そんな感じがしました。
そのためか、ゼノギアスに比べると、曲への感情移入や感動がやや弱かったです。

そういう意味では、第一部と第二部の順番は逆の方が良かったような気もします。
ゼノギアスの第6楽章があまりに素晴らしかったので、クロノクロス→ゼノギアス(1~6)→アンコールでゼノギアス(7曲目)+今回のアンコール曲、という流れの方が、終演後により大きな満足感が得られたような。
まぁ、クロノクロスでは機材(ドラムセットなどの打楽器)があったから、それらの搬出入を考えて今回のような曲構成になったのかもしれませんが。

いつも素晴らしい演奏を聴かせてくれるMoCの演奏会。
多少の不満はないわけではないけれど、それでも十分に満たされた気分になれました。
演奏を鑑賞しているときに沸き起こるあの感動は、何物にも代えがたいものだと思っています。
しかも、今回の演奏会ではいくつか新しい試みが見られて、それらが今後どのように進化していくのかも楽しみです。


これより下の追記は、今回の演奏会のセットリストと、印象に残った曲ごとの感想になります。



セットリストは以下の通りです。

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[第一部] Xenogears
1-1. ソフィアとラカン
傷もてるわれら 光のなかを進まん/グラーフ 闇の覇者
1-2. エメラダ
神無月の人魚/遠い約束/夢の卵の孵るところ
1-3. イド
引き裂かれしもの/紅蓮の騎士
1-4. シタン
風のうまれる谷/天上の楽園ソラリス/予感
1-5. マリア
風が呼ぶ、蒼穹のシェバト/夜空一杯の星を集めて/飛翔
1-6. フェイとエリィ
lost... きしんだ かけら/盗めない宝石/SMALL TWO OF PIECES~軋んだ破片~
1-7. Balto
海と炎の絆

[第二部] CHRONO CROSS
2-1. プロジェクト・キッド
クロノポリス/時のみる夢/アルニ村 ホーム
2-2. ラジカル・ドリーマーズ
夢の岸辺に アナザー・ワールド/RADICAL DREAMERS -MAIN THEME-/3人の盗賊/蛇骨館/疾風/白と黒のレクイエム/炎の孤児院/星を盗んだ少女
2-3. 運命の神に挑む者達
神の庭/失われた欠片/CHRONO CROSS ~時の傷跡~/死海・滅びの塔/運命に囚われし者たち
2-4. 殺された未来の復讐
サラのテーマ/星の塔/龍神/生命 ~遠い約束~/回想 ~消せない想い~/RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~

[アンコール]
E-1. CHRONO CROSSより「龍の騎士/MAGICAL DREAMERS ~風と星と波と~/まどろみ」
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これより下は、曲(楽章)ごとの感想になります。

1-1. ソフィアとラカン
原曲が行方不明なレベルでアレンジの強い曲でした。
時々「傷もてるわれら 光のなかを進まん」のフレーズが聴こえてきて、「あ、オリジナルフレーズじゃなくてアレンジだったのか」と気付かされたぐらい。

今回演奏された曲の中で、一番アレンジが強かったのではないかと思います。
ただ、原曲の厳粛な雰囲気は色濃く残っていて、最初から全力で観客を泣かせに来てるようなアレンジだったし、演奏でした。

1-3. イド
冒頭の一瞬だけ、のどかな曲調。
それが、急転直下で一気に不穏な雰囲気に。
「これから何が始まるんです?」という緊迫した空気に会場全体が包まれたところでの「紅蓮の騎士」。
ここで、その不穏さが一気に爆発したような感じがしました。
この楽章は、曲の展開が巧みでした。
ゼノギアスはどの楽章も同じことが言えるのですが、その中でも随一に上手い展開だったと思いました。

ちなみに、「紅蓮の騎士」の中間にある電子的な人の声は、コントラバスが頑張って再現していました。

1-4. シタン
牧歌的な「風のうまれる谷」、明るく楽しい「天上の楽園ソラリス」からの、何かを孕んでいそうな静かで神秘的だけど不穏な「予感」。
その対比にシタン先生の二面性がうまく表れていた楽章でした。

1-6. フェイとエリィ
「盗めない宝石」の壮大さが、半端なかったです。
原曲の穏やか曲に色々な要素を詰め込んで思いっきり壮大にしたらこうなった、という感じでした。
この曲に、宇宙船でのデウスの暴走と不時着から始まる、1万年の間に起こった全てのエピソードが凝縮されているようでした。
息つく暇もないぐらいに壮大で、次の「SMALL TWO OF PIECES」が始まったとき、少しほっとしたぐらい。
そのくらい感動も強くて、ここまで演奏された曲の流れは、全てこの曲のためにあったのかな、とさえ感じられました。
MoCの演奏会ではいつも思うけれど、編曲の意図が本当に奥深いです。

最初こそほっとさせられた「SMALL TWO OF PIECES」ですが、徐々に熱を帯びてきて、気が付いたら「盗めない宝石」並みに引き込まれていました。
特に2サビ以降の盛り上がりには、ひたすら圧倒されまくり。
ED曲らしい長く苦しい戦いの終結と感動、それらを体現するような素晴らしい演奏で、全身が硬直して胸が震えて息苦しかったほどです。
そして、ほんの少し泣きかけました。これは、泣いていいよね。

1-7. Balto
ゼノギアスのアレンジアルバム「CREID」版を強く意識したアレンジ。
中間部にある、ほんのりJAZZ風味なケルト音楽風の部分も、多少のアレンジはありつつもそのまま再現されていました。

「盗めない宝石」~「SMALL TWO OF PIECES」での大きな感動の後、最後にこの曲を持ってきた意図は、正直よくわかりませんでした。
色々な問題が解決し、平和になったED後の世界で、活気良く精一杯生きる人々を描きたかったのかな。
それとも、単純に演奏したかったのか・・・MoCでそれはないか。

ただ、いくら考察しても、「SMALL TWO OF PIECES」で半端ない終わった感に満足していたので、なんとなく蛇足な感じは払拭できませんでした。
むしろ、この曲もアンコールで演奏すれば良かったのではないかと。

2-1. プロジェクト・キッド
クロノポリスから始まるという、他の演奏会では目にしたことのない始まり方。
クロノクロスのBGMの中でも異質なクロノポリス自体、演奏されることが稀なのに、これでスタートするあたりがさすがはMoC。
確かに全ての始まりはクロノポリスなので、編曲の方針を考えると納得なのですが。
しかも、原曲は電子音の響くデジタルな曲調ですが、そんな原曲の雰囲気を損ねることなく、上手く管弦楽に落とし込まれていました。
あの管弦楽らしからぬテクノ感は、ひとえにパーカッションのおかげだったと思います。パーカスさん、GJ。

2-2. ラジカル・ドリーマーズ
ゲーム「ラジカル・ドリーマーズ」は一応プレイしたことがあるのですが、曲も内容もほとんど覚えていません。
覚えていることは、「クロノクロスと同じ名前のキャラやアイテムが出てくるけれど、全然別物」と「クロノクロスの曲って、ラジカル・ドリーマーズからのアレンジが思いのほか多い」の2点ぐらい。
ラジカル・ドリーマーズにしかない「3人の盗賊」と「白と黒のレクイエム」は、今回の演奏を聴いても、なんか聞き覚えあるようなないようなもやっとした記憶しか呼び起せませんでした。
ただ、ラジカル・ドリーマーズをプレイしていて唐突に「疾風」が流れたときにひどく驚いた記憶は、思い出しました。

それにしても、「疾風」の演奏は、いつ見てもものすごく難しそうに見えます。
音の入りが一拍ズレるわ、変拍子満載だわで、今回も演奏を見てるだけでたいへんさが伝わってきました。
もっとも、そもそも演奏されることを想定した原曲ではないので、原曲通りに演奏しようとするとたいへんなことになるのは、ゲーム音楽の常ですが。
でも、そこはさすがMoC。きっちり音をあわせた演奏になっていました。格好良かったです。

そして、「白と黒のレクイエム」を挟んだ後の「炎の孤児院」もすこぶる格好良かったです。
ここぞとばかりにアグレッシブな弦楽器が、すごく良かったです。
そこから続いた「星を盗んだ少女」のシンプルさは、「炎の孤児院」と程よい対照性を表していて、良い緩急でした。
これは、曲の並びの勝利ですね。

そういえば、クロノクロスの世界観のテーマが「並行世界」だし、そう考えるとラジカル・ドリーマーズ(ゲームの方)ってクロノクロスから見ると「あったかもしれない世界線」になるのかな。

2-3. 運命の神に挑む者達
「失われた欠片」のメインメロディは、ほぼ「時の傷跡」の導入部。
というわけで、「失われた欠片」で大澤氏演奏によるチェロ・ソナタ版「時の傷跡」を間近で聴けただけで、内心大興奮していました。
大澤氏の演奏をこんなに近くで聴けるなんて、俺得過ぎる! 演奏会に行けて良かった!

その「失われた欠片」に続いてようやく登場した「時の傷跡」。
演奏曲順的には珍しい位置にいましたが、演奏自体はほぼ原曲の通りでした。
いつ聴いても「時の傷跡」はたぎるなぁ。

「時の傷跡」から「死海・滅びの塔」を挟んで、「運命に囚われし者たち」。
この曲もほぼ原曲通りだったのですが、原曲通りだったからこそ、この曲が流れたゲームシーンの切なさを思い出してしまい、それを抑えるのに必死でした。
弦楽器特有の切ない響きが、また良い感じでゲームとシンクロしてしまって。
ただでさえ涙腺を刺激してくる曲なのに、より一層ヤバかったです。

2-4. 殺された未来の復讐
環境音楽に近いほど厳かだけど静かでゆったりした「星の塔」で軽く意識が飛びかけていたところ、突然の「龍神」ではっとして意識が戻りました。
今回の演奏会で、「龍神」の曲の格好良さに改めて惚れ直しました。
この曲、生演奏で聴くとめちゃくちゃテンション上がります。

そんなテンションMAXな「龍神」の激しさから一転して、静かに染み入るように胸を打つ名曲「生命 ~遠い約束~」。
序盤は静かに始まりつつも、じわじわと盛り上がって、終盤にドッと押し寄せてくる感動が、本当にたまりません。
原曲も大好きですが、今回の演奏会のアレンジも良かったです。
感動しすぎて上手く言葉にならないぐらい、とにかく感動しました。

「回想 ~消せない想い~」を挟んでのED曲「RADICAL DREAMERS」。
原曲はボーカルとアコースティックギターだけというシンプルなものですが、それを室内楽用にアレンジ。
参加楽器が増えた分、音色が多彩になって、豪華になっていました。
とはいえ、原曲のしっとりした雰囲気は大いに残したままなので、第一部のゼノギアスのED曲「SMALL TWO OF PIECES」に比べるとカタルシスがちょっと足りない気もしました。
が、原曲が原曲なだけに仕方ないかなと思います。

E-1. CHRONO CROSSより「龍の騎士/MAGICAL DREAMERS ~風と星と波と~/まどろみ」
「MAGICAL DREAMERS」は、原曲でエレキギターが担当していたフレーズは、チェロが代わりに演奏していました。
これが意外とマッチしていて、驚きました。
吟遊詩人団「マジカル・ドリーマーズ」がバンド編成ではなく管弦楽団だったら、きっとこんな感じになるんだろうなぁ、というアレンジ。
原曲がポジティブで底抜けに明るいバンドサウンドならば、今回演奏された管弦楽版の方は原曲をハイソにした感じです。
明るさもありつつ、落ち着きもありつつ、といった趣きでした。

それにしても、この曲、楽しくて良いですね。
エレギの音がちょっと苦手でやや敬遠気味だったのですが、ここ何回か生演奏を聴いて考えを改めつつあります。
今回も聴いているだけで楽しかったし、演奏されている方々も非常に楽しそうで、それを見てまた一段と楽しい気分になれる、そんな曲でした。

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